杉山尚子展 [主題と変演]

2015/5/12 – 5/30

この度、ワダファインアーツでは杉山尚子展を開催いたします。杉山は昨年のArt Basel HK 2014でのソロブースで、30年にわたる作家人生の軌跡を辿る展覧会を開催し、世界各国から集まった7万人を超える観客の前で、高い評価と関心を集めました。

そして、そのArt Basel開催からちょうど1年が経ちました。今回の展覧会では、また、新たな挑戦としての創作の息吹が、作家の中に沸々と芽吹いていることがおわかりいただけると思います。昨年の秋から始めた新シリーズの誕生から、徐々に構想が固まってきた直近の作品まで、約半年間の軌跡ではありますが、香港で明確になった、30年の軌跡と同様のプロセスがこの中に有ることがわかります。関心、発見、仮定、実験というように、そのプロセスは歩を進め、その中に多くの芸術的な産物を残しているのだと思います。杉山の場合、作品の創作が目的であるのか、テーマの研究がそれであるのかは、果たして本人も明確ではないのではないか、と私の目には映ります。しかし、こうした日々の重なりがいつのまにか、偉大な作品の集大成となってゆくのであれば、それ以上に純粋な芸術はないのではないのかとも思うのです。

この新しいシリーズも、これまでと同様、視覚の変化を平面上に具現化することへの限りない挑戦に他なりません。今回の作品はこれまで以上に、見る側の視線の角度の変化により、顕著にその形態や色彩に変化が現れ、ご覧いただく際には大きな見所となるでしょう。

この展覧会には「主題と変奏」モチーフ”D”のバリエーションという難解なタイトルがついております。主題とはテーマであり、変奏とはその変化のバリエーションということでありますが、これは、クラシック音楽の世界でよく用いられる用語であることに、お気づきの方も多いかと存じます。このように杉山のアートは普遍的なテーマの追求から、演奏者のオリジナリティを生み出すというクラシック音楽の手法を、ビジュアルアートの観点から掘り下げ、新しい世界を創造してます。

さて、副題にあるモチーフ”D”とは果たして何であるのか?

どうぞ、実際に作品をご覧いただき想像を巡らせてください。

ご多忙の折とは存じますが、皆様のご来館を心よりお待ちしております。

ーY++ Wada Fine Arts 和田友美恵